たんぱく質とは 

たんぱく質を知って、正しく摂取しましょう!

食育セミナー

たんぱく質を摂取する目的

 最近何かと話題になるたんぱく質は筋肉の材料というイメージが強いようですが、人体のほとんどすべての機能にかかわっていて、“生命の維持”には欠かせません。
 
 さて、体温を維持しからだを動かすのに必要なものはエネルギーです。私たちがエネルギー源として使える栄養素は、たんぱく質・糖質・脂質の3つだけで、これを『三大栄養素』と呼んでいます。

 たんぱく質(P)と炭水化物(C)は1g=4kcalに、脂質(F)は9kcalのエネルギーになります。1日の摂取エネルギーをこの3つの栄養素からとる割合を、PFC比と呼んでいます。その理想的なバランスは、たんぱく質(P)15%・脂質(F)25%・糖質(C)60%とされています。(図1)

(図1)PFC熱量比率の推移(1980年度=100、供給熱量ベース)
資料:農林水産省「食料需給表」
注:1)PはProtein(たんぱく質)、FはFat(脂質)、CはCarbonhydrate(炭水化物)
  2)数値は昭和55(1980)年度のPFC比率(P:13.0%、F:25.5%、C:61.5%)を100とした指数

例えば1日1600kcalが必要な人の場合

たんぱく質の理想的な摂取比率が15%であることから 1600×15÷100=240 たんぱく質から240kcalをとる
たんぱく質は1gが4kcalなので 240÷4=60 たんぱく質の1日の摂取量は60gになります。

同じように
糖質は1600×60÷100=960 960÷4=240 糖質の1日の摂取量は240g
脂質は1600×25÷100=400 400÷9=44.44 約45g になります。

 たんぱく質はエネルギー源になるだけでなく、筋肉・肌・髪の毛・爪などもたんぱく質でできていますが、それらは本当にごく一部です。例えば、(図2)のように体の機能を調整するホルモンや、消化をコントロールする酵素、ウイルスや細菌から体を守る抗体などの多くはたんぱく質なのです。ほかにも感情などに影響する脳内物質のセロトニンは、心を落ち着かせる働きが、ドーパミンは快楽や喜びを、ノルアドレナリンは興奮や恐怖などもたんぱく質からできています。ですから、たんぱく質が不足していると、慢性疲労・冷え性・むくみ・貧血・抜け毛・肩こり・腰痛などよく知られている不足の症状だけでなく、「うつ病」などのメンタルの不調につながっていることもあります。
 また、最近では高齢者によくみられる「サルコペニア」や「フレイル」は、 加齢・タンパク質不足・活動量の低下・病気などにけん引されて、 生活の質を低下させ、介護が必要な状態へと進んでいきます。 そういったことを防ぐためには、毎日のたんぱく質を適正量摂取し、若いころからの運動習慣と良い生活習慣を身に付けたいものです。(図3、4)

(図2)人のカラダをつくる部品になるたんぱく質

(図3)

(図4)


どれくらいの体型を維持すればいいかチェックしてみましょう。

BMIとは・・・「BMIの計算方法」と「BMIの目安」について

・BMIの計算方法


(例)身長160cm、体重60kgの場合のBMI
   60(kg)÷1.6(m)÷1.6(m)=23.4(㎏/㎡)

・BMIの目安(18歳以上)

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

たんぱく質の目標摂取量

 高齢者に低栄養の人が増えています。(図5)

(図5)低栄養傾向の者(BMI≦20kg/㎡)の割合(65歳以上、性・年齢階級別)


 フレイル予防を考慮し、65~69歳の目標とするBMIの範囲の下限が引き上げられました。(図6)

(図6)目標BMI
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

 たんぱく質が大切な栄養素であることは、お分りいただけたと思います。健康管理のためには、どの年代も毎日適正量を上手に摂取することがとても重要です。

 日本人の食事摂取基準では(図7)のように、各年代の平均的な体格の人を基準に、1日のたんぱく質の摂取基準が示されています。

(図7)推定エネルギー必要量(kcal/日)
※身体活動レベルは、低い、ふつう、高いの3つのレベルとして、それぞれⅠ、Ⅱ、Ⅲで示した。

(図8)年齢別たんぱく質の目標量
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

 これはひとつの目安で、体格にはかなり個人差があるので、一般家庭では体重1㎏あたり1.0gと覚えておくといいでしょう。高齢者はたんぱく質の消化吸収能力が落ちているため、筋肉量の維持のためにも体重1kgあたり1.2gが目安です。成長期・運動をしている人・妊娠・授乳期・疾患のある人などは、体の状態によって異なります。

 20種類のアミノ酸が、さまざまに組み合わさって10万種類ともいわれる体を作っているたんぱく質になっています。20種類のアミノ酸のうち体内で作れないため食品から摂取する必要があるのが9種類で『必須アミノ酸』と呼ばれています。それに対し、体内で作れる11種類が『非必須アミノ酸』に分類されます。(図9)毎日の食事から必須アミノ酸を不足することなく摂取し、あわせてその他の必要な栄養素も過不足なくとるには、上手な食品選びを覚えることが必要です。

(図9)


 たんぱく質には動物性と植物性の2種類があります。動物性は肉・魚介・卵・牛乳・乳製品などに含まれ、必須アミノ酸をバランスよく含んでいます。たんぱく質の栄養価を表すアミノ酸スコアが100のものがほとんどなので、効率よく体内で利用することが出来ます。ただし脂肪が多いものもあるので、摂り過ぎは肥満や生活習慣病の原因になりかねません。 植物性たんぱく質は、大豆・大豆製品・穀物・野菜などに含まれています。大豆・大豆製品のたんぱく質は植物性でも良質ですが、そのほかは必須アミノ酸のバランスが悪く、動物性たんぱく質と組み合わせることによって効率よく体内で使えるようになります。

 不足している必須アミノ酸をほかの食品に含まれている余った必須アミノ酸で補えば、無駄なく使えるようになります。植物性のたんぱく質の必須アミノ酸にはリシンが不足しているものが多く動物性にはリシンが多いことも、動物性と植物性のたんぱく質をバランスよくとる理由のひとつです。(図10)

(図10)


 毎日のたんぱく質摂取の理想的なバランスは、動物性:植物性=1:1です。このバランスとPFC比を守ることで、理想的な体重を維持し、健康管理ができるようになります。

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